「HanesのTシャツは、青ラベルと決めている」


私が高校生だったところ「Tシャツはヘインズの赤ラベルと決めている」と言っていた友人がいた。その友人は、おしゃれに気をつかっていて、いわゆる自分のスタイルのようなものを持っている人だったので、そんな彼の言動が当時の私にはかっこよく見えた。そういう年頃だった。

そこで私はバイトをして稼いだお金を握り締め、ヘインズの赤ラベルと青ラベルのTシャツを1パックずつ買ってみることにした。まずは両方を着てみてから、どちらがより自分の好みに合っているかを確かめる。そして気に入った方を愛用して「オレは、Tシャツはヘインズの〇〇ラベルしか着ない」と真似をしようと思ったのだった。

実際に試してみたところ、高校生の私には「赤ラベルでも青ラベルでもさほど大きな差はない」ように感じられた。もちろん素材感による違いはある。青ラベルの方が乾きやすいが、肌触りが固い。赤ラベルは肌触りが柔らかだが、その分若干ヨレやすい。

しかし高校生の荒っぽい感覚しか持ち合わせていない私には「このくらいの差であれば、どちらでも良い」ような印象を受けた。そこで青系の色が好みだった私は、「青ラベルのTシャツ」を選ぶことにしたのだった。その程度の内容だった。つまり、内容よりも見た目優先で選んだわけだ。この方針は、高校生の頃から今でもさほど変わっていないと思う。

それから高校、大学と、ヘインズの青ラベルで通していた。貧乏学生だったので、首回りが伸びてヨレヨレになるまで着た。さらにTシャツとしての役目を終えた後は、バイクを磨く時の布にしてフル活用したのだった。そしていつの頃からか、ヘインズのTシャツを着なくなっていた。

それにしてもなぜ、ヘインズのTシャツを着なくなったのだろう。正確なところは、もうすっかり忘れてしまった。気がつくとヘインズ以外のTシャツを買い、適当なところで処分し、また適当なTシャツを買っていた。そして「ヘインズのTシャツ」を手にする機会は、全くなくなっていたのだった。


先日、アマゾンのセールで、ヘインズのTシャツが目に止まった。懐かしさもあって、青ラベルの3パックセットを購入した。数日後に届いた「それ」に袖を通してみた。「ああ、そうそう、これこれ!」といったような感傷を自分に期待したのだが、特にそのような感情はおこらなかった。タグではなくて、印刷になっていたのがなんとなく寂しいような気がした。

あの頃「Tシャツはヘインズの赤ラベル」と口にしていた友人は、今でもヘインズを着ているのだろうか。彼の場合、どんなに成功してどんなにお金があったとしても、常にクローゼットの中にストックがあるような気がしている。たとえ着ることはなくなっても、そんな付き合い方をしているような気がしている。

【追記】
約九ヶ月後のプライムセールで、同じ「青ラベルのTシャツ」を追加で購入した。私の朧げな記憶だと、青ラベルのTシャツは一年ほど愛用すると首元が緩くなったような印象があった。しかし今回購入したTシャツは、首回りも伸びていないしそこまでヨレた印象もなかった。商品が改良されたのか、大人になってあまり動き回らなくなったので伸びなくなったのか。

それはわからないのだが、セール価格になっていたので追加で購入しておくことにした。そんなわけで、ここからしばらく私のTシャツはヘインズの青ラベルである。


【参考】アマゾンで「ヘインズのTシャツ」を探す

人気のある記事

カシヤマのオーダースーツで、礼服をつくる。【オンワード樫山】

【買い物】ヘインズTシャツは「青ラベル」と決めていた、のだが。【青ラベルから、ゴールドラベルへ】

50歳になって、考えたこと。【思えば遠く来たもんだ(中原中也 頑是ない歌より)】

【Youtube 佐藤ゼミ】志賀直哉「小僧の神様」あらすじ解説

【北海道旅(2回目)】青い池、は本当に青いのか?